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暖かみと夢のあるIT活用:五洋建設
(第1回)


(第1回)
(第2回)
4.技術紹介(2):津波防災対策システム
4-1 概要
4-2 特色
4-3 システム
4-4 まとめ
あとがき


はじめに

 このコーナーでは、ITの活用を交えながら建設業界各社の現状を紹介している。今回は、中部国際空港(セントレア)の完成が記憶に新しい五洋建設株式会社を紹介する。

1.五洋建設の紹介

1-1 沿 革

五洋建設株式会社は、明治29年に水野甚次郎が創立した水野組を前身とする建設企業である。古くは“水の土木の水野組”と呼ばれた海洋土木のトップ企業であり、昭和43年(1968年)には酒井建設工業株式会社の吸収合併により陸上土木部門を充実させた。現在では従業員約3千人を擁する全国スケールの準大手総合建設企業となっている。

1-2 コンセプト

“創造する心に国境はない”という五洋建設の信念は、手がけた建設物を自社サイトで「作品」として紹介する姿勢にも現れている。
 五洋建設の経営理念は以下のとおりである。

・社会との共感
高い品質の建設サービスを通じ、顧客や取引先、株主や地域社会に貢献し、信頼されることで持続的に発展し続ける企業を目指す。
・豊かな環境の創造
豊かな自然環境を後世に伝えていくことは社会生活、経済活動の礎であることを強く認識し、地球環境に配慮したモノづくりを通じて、安全で快適な生活空間と豊かな社会環境を創造する。
・進取の精神の実践
顧客や社会のニーズに対し、実直に応えるとともに、企業を取り巻く社会の変化に対して常に進取の気概を持って挑戦する。

なお、五洋建設のマークは、五つの三角形を組み合わせた五角形としてデザインされており、それぞれの三角形は、太平洋・大西洋・インド洋・南氷洋・北氷洋の五大洋を表しているという。

2. IT基盤と活用

2-1 社内ネットワーク基盤

同社のネットワークの概要は下図のとおりである。

図1 五洋建設のネットワーク基盤
図1 五洋建設のネットワーク基盤

五洋建設は1992年頃から、全社の組織的なネットワーク構築に乗り出した。
 ネットワークの中核となるのはIT推進部である。2001年に飯田橋本社から那須技術研究所内に拠点を移している。震度7の激震にも堪えうる免震棟にすべての機器をおさめ、データの保全を図っている。同地を拠点に選定した最大の理由は、地震がほとんどないことであるという。反面、“雷銀座”といわれるほど、落雷による停電が頻発している。そのため、自家発電装置と無停電電源措置(UPS)は、システムにとって不可欠の要素となっている(実際に、取材を行っている間にも、突然の雷雨による停電が発生したが、約10秒ほどで復旧した)。
 2002年にIP-VANおよびインターネットVANを使用した通信インフラに移行した。現在、クライアント数は約3,800台となっている。また、コミュニケーションツールとしてNotesを採用している。
 各営業所・工事事務所からのネットワーク接続には、ワンタイムパスワードを使った認証を行っている。特にモバイル接続についてはダイヤルアップを含め複数回の認証が必要となっており、これによってセキュリティの強化を図っている。
 規模の小さい関連会社については、先方のIP-VANと自社のIP-VANを接続し、情報部門の処理を代行する形でメンテナンスの負荷を軽減させているという。
 近々、本社と那須技術センター間の回線を二重化・高速化する予定となっている。また、必要に応じて、他の回線も順次二重化し、通信の安定性を向上させる計画が進んでいる。

2-2 IT活用事例:全社掲示板や土木部門情報サービスなど

自社のイントラネットに接続しているメンバーには、現場の社員はもちろん関連会社の社員にもLotus NotesのIDが支給されている。
 メンバーの予定や作業の報告、また上司の許可や決済といったワークフローは、Notesのメールを使って回付される。また、以下に示すようなデータベースに各自がアクセスし、仕事の進捗を確認したり、意見を交換したりすることができる。

表示例1 全社掲示板

表示例1 全社掲示板

表示例2 土木部門情報サービス

表示例2 土木部門情報サービス

3. 技術紹介(1):建築物流 動体位置管理システム

同社では、これまでに「地盤無人化施工システム」「盛土管理システム」「工事海域の全船舶運航安全管理システム」「水質環境モニタリングシステム」「動体位置管理システム」「津波防災対策システム」など、数多くのシステムを手がけている。今回は、その中でも「動体位置管理システム」および「津波防災対策システム」の2つにスポットを当てて紹介する。

3-1 概要

はじめに紹介するのは「動体位置管理システム」である。
 文字通り、動くものの位置を管理するシステムであるが、ここではこのシステムを応用した、倉庫の在庫管理を例に説明させていただく。

一般的な平置き倉庫では、「どこになにが積まれている」という基本的な情報が把握しにくい状況にある。パレット(荷物)の整理は、フォークリフトのドライバーに任されていることが多いため、作業者の経験によっては、急ぎの出荷物が倉庫の奥に置かれてしまったり、仮置きするパレットがちぐはぐな状態になったり、といった状況になることも少なくない。
 また、荷物の正確な位置はパレットを置いた本人しか把握していないため、不在のとき出庫に手間取ることもあるという。
 もちろんこのような状況では、入出庫担当者も現場の状況を把握できず、効率のよい作業指示を出すことは困難であった。
 効率的な在庫管理の手段として自動倉庫という選択もあるが、こちらは建設にも維持にもコストがかかる。また、次々に規格の異なる荷物が登場する現在の物流現場では、入出荷物の形状や大きさの変化に対応しにくいというデメリットも大きい。
 ローコストで柔軟な運用ができる平置き倉庫のメリットを生かしつつ、収納・作業効率を最大限に引き上げることはできないか。そうした要望に応える形で、「動体位置管理システム」を使った「在庫管理システム」が登場した。 五洋建設とエイ・アイサービス株式会社が開発した「動体位置管理システム」は、倉庫(物流施設)を設計する際、顧客に庫内のレイアウトの提案を行うために使われた「物流調査システム」が基本となっている。「物流調査システム」は、フォークリフトなどに発信器を取り付け、天井に設置した受信機で発信器の位置を取り込むことで、動体(フォークリフト)の位置情報を把握する。これを3Dシミュレーターに反映し、リアルタイムに視覚化することもできる。

図2 物流調査システム イメージ

図2 物流調査システム イメージ

蓄積された位置情報から、フォークリフトの軌跡(移動履歴)を把握し、通路の混み具合や時間帯による集中度を分析することできる。また、滞在時間を球の大きさとして表示することで、どのポイントにどれだけの時間滞在していたかを分析することもできる。

図3 作業動線表示(移動履歴) 図4 滞在時間体積表示

図3 作業動線表示(移動履歴) 図4 滞在時間体積表示 
           

「物流調査システム」は汎用性が高く、さまざまな局面で活用できるソフトである。すでに述べたとおり、合理的な倉庫のレイアウトを検討するためにも使われていた。これを応用し、フォークリフトが運んだパレットの情報を組み合わせることで、「動体位置管理システム」はローコストかつ正確な「在庫管理システム」として活用されることとなった。

3-2 特色

管理コンピューター(Ralc-SVR)がフォークリフトの移動履歴を介して常に在庫の位置を把握しているため、入出庫管理者からはいつでも現場の作業状況が確認でき、パレット(荷物)の位置も把握できる。また、フォークリフトのオペレーターは、現場状況をふまえた指示を受けることができ、ミスがあったときは指摘を受けたり、作業状況に応じて自動的に応援を呼んでもらったりすることもできる。
 もちろん入出庫の順番は管理コンピューターにまかせて、各自の作業に専念することができるのも大きなメリットである。
 平置き倉庫の運用のしやすさはそのままに、「何がどこにあるかわからない」、「効率の悪い積み方をしている」といった問題とは無縁な、合理的な入出庫および在庫管理ができるようになる。

図5 システムを利用することのメリット

図5 システムを利用することのメリット

3-3 システム

まず、平置き倉庫内を走るフォークリフトに発信器(IDユニット)を取り付け、その位置を天井に設置した受信機で観測する。
 この赤外線と超音波による位置取得システムは、株式会社アイオイ・システム製の「S-IDシステム」である。XYZ座標の動体観測の精度は誤差30cm以内となっている。最大30件のIDを認識でき、最大感知面積は5,625平方メートルである。

図6 物流調査システム構成(S-IDシステムの構成と発信器)

図6 物流調査システム構成(S-IDシステムの構成と発信器)

「S-IDシステム」で観測された位置情報はイーサネットを経由して管理コンピューターに送られる。これを3Dシミュレーターに反映し、リアルタイムに位置情報を視覚化したり、稼働の履歴を視覚化したりして、分析することができる。

図7 物流調査システム−稼動状況の把握

図7 物流調査システム−稼動状況の把握

また、パレット(荷物)の情報は、無線アクセスポイントを介して管理コンピューターに取得される。「S-IDシステム」によって取り込まれた「フォークリフトがどこを走ったか」という情報と、「各フォークリフトがどの荷物を運んだか」という情報を組み合わせることにより、管理コンピューターは「どこになにが積まれている」というパレット単位の在庫情報を作成できる。

この正確な在庫情報(3次元ロケーション情報)を3Dシミュレータに取り込み、立体的に分かりやすく管理することができる。もちろんフォークリフトのツメの位置も認識されるため、パレットが置かれた「段」も正確に管理できるようになっている。

図:フォークリフトの位置情報を利用した「在庫管理システム」
(画像をクリックすると「在庫管理システム」が動画で見られます。:2.83MB)

図8 フォークリフトの位置情報を利用した「在庫管理システム」

3-4 まとめ

平置き倉庫の在庫管理が難しいという話は意外であった。
 本来、フォークリフトの軌跡を追うために使っていたツールを在庫管理に応用したヒントは、顧客からのリクエストにあったという。
 「動体位置管理システム」では、大きなコストをかけることなく、パレット単位の在庫情報がフォークリフトの移動作業と同時に作成される。このため、フリーロケーションによる利用でも正確な在庫を把握でき、余剰在庫を削減することができるようになる。また、これらの情報を整理して、管理者に物流改善や物流コストの設定に必要な情報を提供することもできるとのこと。
 3Dシミュレータが出力する管理画面は視認性に富み、入出庫管理者は離れた場所からもリアルタイムで作業の進捗や倉庫内の内容を確認できる。また、フォークリフトのドライバーは車載端末から移動先の指示情報や製品ロットなどを容易に確認できる。現場のメリットはもちろん、経営者からみても、既存の倉庫をローコストで効率化できる素晴らしいシステムといえよう。

(インタビュアー (株)ブレーン・トラスト;2005年8月記)
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