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(第1回) |
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(第2回) |
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このコーナーでは毎回、建設あるいは情報分野に関係する大学研究室等の現状を紹介している。今回は自衛隊の幹部(国際的に通用する用語としては士官)となるべき者を教育訓練するために設置されている防衛大学である。正確には「防衛大学校」であって「防衛大学」ではないと言うと怪訝に思われる方も多いと思うが、本校は防衛庁設置法に規定されている機関だからで、文部科学省所管ではなく学校教育法の適用を受けないために、「大学」とは名乗れないのである。
しかし、学校教育法施行規則にある「大学設置基準」を満たした設備、編成、教員の資格、カリキュラムの下で教育が行われているので、本科(学部課程に相当する)の卒業生は学士号を取得できるし、研究科(大学院に相当する)もあって、修士号や博士号も取得できる。しかし、学位授与には文部科学省の「大学評価・学位授与機構」の審査を受ける必要があるのが、一般の大学と違うところであろう。また、学生の身分は特別職の国家公務員であり、授業料は免除されて手当があるのも他大学とは大きな違いである。
世間的にはその内実が余りよく知られていないであろう防衛大学の一端を、建設環境工学科(旧土木工学科)を中心に紹介する。
防衛大学校に一歩踏み入れてまず驚くことは手入れの行き届いた植え込みと、整備された施設群である。一般の大学で感じられる雑然とした感じは微塵もなく、何か整然としたものを感じたのは、取材したのが夏休みの時期であったことだけではないような気がした。校舎の敷地には点々と戦闘機や戦車等の兵器がモニュメントのごとくおかれ、一種独特な雰囲気を醸し出しているが、大学校としての違和感を感じることはない。
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学校本部棟
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総合体育館 図書館 |
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学生舎群
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校舎 |
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防衛学教育棟近くに置かれたF1ジェット戦闘機
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防衛学教育棟近くに置かれた74式戦車
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まず、防衛大学校の歴史と、その特徴ある組織について紹介する。
昭和27(1952)年8月1日に保安庁の付属機関として保安大学校を設置したことに始まる。その後、昭和29年には防衛大学校と改名し、翌年現在地の横須賀市小原台に同市久里浜から移転をした。最初は理工系のみでスタートしたが、自衛官も国際的な場で活躍することが多くなり、幅広い人材の育成が必要との理由で昭和49年に人文・社会科学専攻を開設している。平成3年の12月に本科と理工学研究科が大学の学部及び大学院の修士課程相当と認定され、翌年3月に初めての学士の学位授与がなされた。平成12年には人文科学教室等の16教室を廃止し、教育目的や学問的共通性で区分した学群制を取り入れ、総合教育群を始めとする6群21教育室・学科に組織改編を行った。その後、平成13年に大学院の博士課程相当の理工学研究科後期課程を開講し、1年後の14年に創立50周年を迎えたのである。この間2万人の卒業生を送り出している。
| 年月日 | 事 項 | 年月日 | 事 項 |
|---|---|---|---|
| 昭和27年8月1日 | 保安庁の付属機関として保安大学校を設置 | 平成4年3月22日 | 本科第36期卒業生に学士の学位授与 |
| 昭和28年4月1日 | 横須賀市久里浜の仮校舎で開校 | 平成4年4月1日 | 本科第40期学生に初めて女性が入校 |
| 昭和29年7月1日 | 校名を防衛大学校と改名 | 平成4年9月18日 | 理工学研究科第29期卒業生に修士の学位授与 |
| 昭和30年4月1日 | 横須賀市小原台の新校舎に移転 |
平成8年4月1日 | 理工学研究科教育課程の改革を実施し、専門・系列を専攻・大講座に再編成 |
| 昭和32年3月26日 | 本科第1期学生の卒業式を挙行 | 平成9年4月1日 | 総合安全保障研究科開講(大学院の修士課程相当) |
| 昭和37年4月1日 | 理工学研究科開講 | 平成12年4月1日 | 人文科学教室等の16教室を廃止し、教育目的や学問的共通性で区分した学群制を取り入れ、総合教育群を始めとする6学科21教育室・学科に組織改編 |
| 昭和49年4月1日 | 人文・社会科学専攻を開設 | 平成12年4月1日 | 本科教育課程の専門区分を14学科とし、理工学研究科に前期課程及び後期課程を設置 |
| 昭和59年7月1日 | 防衛庁設置法の改正により、施設等機関となる(防衛庁設置法第17条) | 平成13年4月1日 | 理工学研究科後期課程開講(大学院の博士課程相当) |
| 平成元年4月1日 | 本科の教育課程の改革を実施し、専門区分を学科に再編成 | 平成14年8月1日 | 創立50周年 |
| 平成3年12月18日 | 本科及び理工学研究科が大学の学部及び大学院の修士課程相当と認定 |
本科は教養課程に相当する総合教育学群、文化系の人間社会科学群、理工系の応用化学群、電子情報学群、システム工学群、さらに防衛学教育群の6学群があり、その下に14学科と7室が置かれている。6学群に加えて付属施設として学術情報センターがあり、ここでは遠隔教育研究、IT技術研究、情報システム活用研究、マルティメディア教育研究の4部門があって、情報教育にも力を入れていることが窺える。

図1 防大の本科課程
防大では旧陸海軍の反省から科学的・合理的思考のできる幹部の養成を目的として最初は理工系のみでスタートしたが、自衛官も国際的な交流の場も多く、幅広い人材の育成が必要と認識されたことで昭和49年に人文・社会科学系が設置され、現在は図1に見るごとく人間文化、公共政策、国際関係の3学科で構成されている。ちなみに、今回取材に協力して頂いたのは、システム工学群に属する建設環境工学科(旧名称は土木工学科)の大野研究室と古屋研究室であり、両研究室については第2回で紹介する予定である。
学生は2年に進級する際に、卒業後に陸・海・空のどこに行くか(これを要員別という)、本科課程14学科の何を専攻するかを決める。1学年の定員は基本的には460人で、要員別のシェアーは陸が高くて約6割を占め、海と空がそれぞれ2割となるが、海の方が若干少ないそうである。卒業時に話題になるいわゆる任官拒否者は、近年の景気状況や防衛意識の高まりからか非常に少なくなっており、5%前後のようである。
学生の修業年限は4年間で、学年度は4月1日に始まり翌年3月31日に終わる。また、学年度は前学期及び後学期の2学期となっているなど、一般の大学と同じである。1,2学年で専門基礎を履修し、3学年から各学科に分かれて専門科目を履修する。4学年では卒業論文が課せられる。特徴的なことは、教養教育と外国語、さらに体育は1〜4学年に渡って履修することになっていることである。その後、大学院に進学する道があり、修士課程相当として理工学研究科前期課程と総合安全保障研究科のどちらかを選択するが、理工学研究科だけは博士課程相当の後期課程もある。受験資格は防衛庁各機関の長の推薦を必要とするが、防大を卒業したものだけでなく、文科省の学校教育法による一般大学卒の自衛官幹部はもちろん、民間企業の人も受験することができる。ただし、理工学研究科後期課程に進学できるのは当研究科の前期課程からだけである。
理工学研究科前期課の1学年の学生数は90名を基準として、修業年限は2年、専攻は7専攻あり、電子工学、機械工学、航空宇宙工学、物質工学、情報数理、境界科学、地球環境科学となっている。後期課程の1学年の学生数は20名が基準であり、修業年限は3年、専攻は電子情報工学系、装備・基盤工学系、物質・基礎科学系の3専攻がある。
総合安全保障研究科は1学年の学生数は20名が基準であり、修業年限は2年、専攻は国際安全保障コースと戦略科学コースの2つの履修コースがある。
防大生は卒業のために、通常の4年生大学とほぼ同じ128単位の修得に加えて、23単位の防衛学履修と4年間で1,005時間の訓練課程が必須とされているところに大きな特徴がある。防衛学の内容は統率・戦史、戦略・作戦、国防論など防大ならのものであり、教官の多くは現役の自衛官である。訓練課程では1年生は主に体力養成に主眼がおかれており、一例を挙げれば、7月下旬には防大下の走水海岸から横須賀沖にある猿島までの往復約8kmの遠泳がある。一方、2年生以上の上級生は要員別に各地の部隊や演習場に赴き、実際的な研修や実習を受けることが主になる。さらに、学期中においても週に2時間程度ずつ校内での訓練がある。これらの訓練によるものか防大でお会いした教官の方々や学生さんは、その多くが素晴らしい肉体をしていたのが印象に残っている。
さらに、防大の特徴の一つとして、 学生隊がある。 学生隊は学生の共同生活を円滑にし、将来部隊においての指揮、指導、管理等の能力向上に資するためと、自立心を涵養することを目的として、全学生を持って編成されている。学生隊は4個大隊からなり、1個大隊は4個の中隊、1個中隊は3個の小隊で編成される。つまり、一般の大学と同じような1学年、2学年といった学年や専攻別の組織と併せて、防衛庁の設置大学校らしい学生隊が並行して組織されていると言うことである。
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| 遠泳 | 図2 学生隊の編成 |
訓練課程を指導するのは、指導(教)官と呼ばれる現役自衛官で、文官教官は(教室)の先生と呼ばれているそうである。防大は全寮制で、指導教官は学生舎で一緒に生活をして、躾教育(敬礼・整列・行進の仕方、士官としてのマナー等)も行う。文官教官は他大学と同じように課程の専門学科を教えるが、就職指導等の学問研究とは関係のない学生サービスをする必要がないので、その意味ではかなり楽だとのこと。
防大生の日課は朝6時30分起床、授業開始は8時30分、その間昼食を挟んで午後5時に授業は終わり、夕食は6時〜7時、その後、入浴、自習時間を経て22時30分に消灯となっている。日課表の中には交友会活動があるが、これは全員参加が義務付けられており、とくに1年生は必ず体育系のどこかの部に属さなくてはならないことになっている。図4に示すように文化系の部や同好会もあるが、体育系に比べて少ない。
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| 図3 防大生の日課表 | 図4 交友会 |
これまで紹介してきたように、防大生は防大ならではの講義もあるが、ほぼ他大学と同じようなカリキュラムの下、将来の士官候補生としてその肉体は厳しく鍛えられ、集団組織に必要な規律ある生活も徹底的に教えられている。しかし、一般の大学と共通する悩みを抱えているのも否定できない。それは入学してくる学生の文章力や語彙の不足、専門分野における基礎知識の欠如、使命感、責任感、意欲に欠ける、躾や一般常識が無い、広い視野と論理的思考ができない等である。これらの問題は防大だけで解決できるものではなく、世の中の価値観の違いや昨今の若者の考え方によるのであろうが、現在の風潮と防大の求める学生像とを一致させることは、なかなか難しいと感じられる一面もあったことは否定できない。
さて、防大の紹介が長くなったが、今回訪問したのは以前、土木工学科と呼ばれていた建設環境工学科の大野研究室と古屋研究室である。次回に、この2つの研究室について紹介したい。
(インタビュアー (株)ブレーン・トラスト丸山民夫;2005年9月記)
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<次回に続く>
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