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循環型社会が求める公共事業におけるゼロエミッション(第1回)


(第1回)
  循環型社会へのパラダイム転換
  ゼロエミッションへ向けた取組み
(第2回)
  建設副産物における情報管理
(第3回)
  建設リサイクルの認知度向上のために
  建設リサイクルの展望

 

植田 和弘
京都大学大学院経済学研究科教授/
建設リサイクル推進懇談会委員
植田 和弘氏
大平 将之
社団法人日本建設業団体連合会
環境関連法制度研究WG委員/
株式会社竹中工務店東京本店
安全環境部環境担当部長

大平 将之氏

杉山 涼子
株式会社杉山・栗原環境事務所 代表取締役/
建設リサイクル推進懇談会委員
杉山 涼子氏
藤井 元生
国土交通省総合政策局
建設副産物企画官
藤井 元生氏
【司会】
柳澤 茂樹
財団法人日本建設情報総合センター 研究第二部長/
建設副産物情報センター長
柳澤 茂樹氏

 

   
循環型社会へのパラダイム転換
   
柳澤
 20世紀、特に戦後のわが国においては、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動が拡大し、国民生活は物質的に豊かになりました。一方で、近年の地球温暖化や産業廃棄物といった深刻な社会問題をもたらしました。
 これらの問題解決に向け、平成12年に政府はこれまでの社会のあり方、国民のライフサイクルを見直し、社会における物質循環を確保することにより、天然資源の消費が抑制され、環境への負荷の低減が図られた循環型社会を構築することを宣言し、同年の通常国会で「循環型社会形成推進基本法」(基本法)が成立しました。
 その際、この基本法以外にも、「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(建設リサイクル法)、「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)、「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」(グリーン購入法)が新たに制定されるとともに、「再生資源の利用の促進に関する法律」(リサイクル法)と「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(廃棄物処理法)が改正され、まさに平成12年は循環型社会元年と言えるのではないでしょうか。
 現在、国土交通省関係では、本年の5月30日に建設リサイクル法の完全実施を控え、官民挙げて、それぞれの適切な役割分担のもと、再生資源の十分な利用、廃棄物の減量を図りつつあります。
 今までのいわゆる大量廃棄社会から循環型社会へのパラダイム転換の必要性は、皆さんが認めるところではないでしょうか。

循環型社会形成推進基本法
平成12年6月2日公布
内容は、

  1. 形成すべき「循環型社会」の姿を明確に提示
  2. 法の対象となる廃棄物等のうち有用なものを「循環資源」と定義
  3. 処理の「優先順位」をはじめて法制化
  4. 国、地方公共団体、事業者及び国民の役割分担を明確化
  5. 循環型社会形成推進基本計画を策定
  6. 循環型社会の形成のための国の施策を明示するなどを柱としている。

建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律
(建設リサイクル法)

平成12年5月31日公布
内容は、

  1. 建築物等に係る分別解体等及び再資源化等の義務付け
  2. 分別解体及び再資源化等の実施を確保するための措置
  3. 解体工事業者登録制度の創設
  4. 再資源化及び再生資源の利用の促進のための措置等を柱とする。

食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律
(食品リサイクル法)

平成12年6月7日公布
内容は、食品廃棄物等、食品循環資源を対象物、食品関連事業者を対象者とし、

  1. 排出の抑制及び再資源化の実施
  2. 再生利用促進のための措置
  3. 国による基本方針の策定を柱とする。

国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律
(グリーン購入法)

平成12年5月31日公布
環境負荷の低減に資する物品・役務について、国等の公的部門における調達の推進、情報の提供などにより、環境負荷の少ない持続可能な社会の構築を図ることを目的とする。
内容は、

  1. 国等における調達の推進
  2. 情報の提供を柱とする。

再生資源の利用の促進に関する法律
(リサイクル法)
平成3年10月25日公布
平成12年6月2日に改正し、資源の有効な利用の促進に関する法律の改正(資源有効利用促進法)に名称が変更。
内容は、

  1. 事業者による回収・リサイクルの推進
  2. 特定業種及び指定製品の種類の拡充
  3. 副産物の発生抑制・リサイクル対策の推進を柱とする。

廃棄物の処理及び清掃に関する法律の改正
(廃棄物処理法)

平成12年6月2日公布

  1. 国による基本方針の策定
  2. 都道府県廃棄物処理計画の策定
  3. 都道府県の行う産業廃棄物の処理
  4. 多量排出事業者による処理計画の策定
  5. 廃棄物処理センター制度の見直し
  6. 廃棄物の適正処理のための規制強化を柱としている。
 
循環型社会形成推進基本法の概要
図−1  循環型社会形成推進基本法の概要
出典:環境省
植田

 確かに戦後、日本は大量生産・大量消費・大量廃棄型社会を形成してきました。国土が無限にあるなら、このスタイルでも大きな問題にはならなかったかもしれません。しかし、限りあるわが国の場合、さまざまな影響が大きくなり、ここに新しいパラダイムが希求されることになりました。自然との共生・循環システムです。改めて今、共生と循環というルールを人間の社会、あるいは公共事業の中にも組み入れていくことが課題になってきました。
 ここでパラダイムを転換する上で、キーとなる項目が経済的効果です。この新しいパラダイムを具体的に実現するための、今までにないルールまた利潤を生む仕事が求められますね。確かに、そこには様々な新しい課題が出てきていますが、今こそ今後の新しい展望を切り開いていく時期にあり、それはたいへんに意義があり、挑戦のしがいもあると思います。

 
建設リサイクル法制定の背景
図−2 建設リサイクル法制定の背景
出典:建設副産物リサイクル広報推進会議
 

ゼロエミッションへ向けた取組み

 
柳澤
 国土交通省では、平成12年度の基本法成立以前から建設リサイクル推進に取り組んでこられています。また循環型社会の構築を図るため、建設リサイクル法の趣旨を踏まえて、建設リサイクル重点施策を策定されています。
 そこで、藤井建設副産物企画官に、現在までの国土交通省における建設リサイクル推進の経緯と重点施策の概要についてお話を伺いたいと思います。
 
建設リサイクル法概要
図−3 建設リサイクル法概要
出典:建設副産物リサイクル広報推進会議

公共事業におけるゼロエミッション推進
図−4 公共事業におけるゼロエミッション推進
出典:建設副産物リサイクル広報推進会議

藤井
 建設リサイクルに着目したのは、平成3年のリサイクル法が施行された時です。その年に、「コンクリート、アスファルトや木材など、現場から出たものは必ず再資源化施設へ持っていきなさい」、「近くに再資源化施設があれば、そこで製造しているリサイクル材を必ず使いなさい」という基本的なリサイクルの原則ルールを定めました。その後、平成6年に「リサイクルプラン21」という行動計画を策定しました。
 その翌年、平成7年に建設副産物の実態調査(センサス)を行い、その結果を踏まえ、平成8年に建設リサイクル懇談会を建設本省に設置し、有見識者の方々のご意見を伺いながら、新たな行動計画として「建設リサイクル推進計画'97」を平成9年に策定しました。ここに発生抑制、再利用の促進、適正処理推進、それと品目ごとのリサイクル率の目標などを盛り込んだのです。
 また、発注者として一体どういうことを守るべきかという指針「リサイクルガイドライン」を合わせて平成10年に策定しました。
 さらに平成7年、8年、9年といろいろ検討を進めていく上で、どうも建築解体物について対策を急がなくてはいけないことがわかってきまして、特に建設解体についてリサイクルはこうあるべきというプログラムを平成11年に作りました。この中で分別解体の概念が初めて盛り込まれました。
 そこまでの準備段階があって、平成11年のダイオキシン騒動以降、循環型社会形成推進基本法等の法制化の動きがある中で、建設廃棄物についても法制化を図るべきだということで、平成12年5月に建設リサイクル法が公布されました。そして、今年の5月30日に法律の完全施行に至るといった状況になっています。
 現在は建設リサイクル法の円滑な推進とあわせて、平成13年1月策定の建設リサイクル法に基づく基本方針の中で、平成17年度までにコンクリート、アスファルト、木材については、直轄工事においてはゼロエミッション化の達成を目標としていますので、平成14年度は公共事業におけるゼロエミッション化の推進に努めることとしています。
 具体的には、東京周辺において、いくつかモデル工事を選び、実際にゼロエミッションを実施します。その工事では、排出するすべての廃棄物についてゼロエミッションを実施し、現状でどのような問題点が生じるのか、問題点解決のためにはどのような対策が必要かを検討する予定です。
 また、こういったゼロエミッションの実証実験に合わせ、効率的な静脈物流システムの実験も行います(建設EDI)。生産物を運ぶ動脈は、大きい方から小さい方へ分かれ流れていきますが、リサイクルといった静脈の場合は、動脈とは逆で、細かいものから大きいものへ効率的に集めなければなりません。現在、その実験を早稲田大学の椎野潤先生とプロジェクトチームをつくり実施していこうと考えています。
センサス
建設副産物実態調査のこと。
建設副産物の具体的な政策立案に不可欠な、廃棄物の発生量やリサイクルの動向などのデータの把握のため、全国規模の調査として平成2年度の工事より、5年間隔で実施する大規模調査。平成14年度からは毎年実施することになった。
 
建設EDI
建設EDI(Electronic Data Interchange)とは建設業務上で複数企業の間でコンピュータ通信を用いて、情報を交換することをいい、情報接着剤役として、動脈物流と静脈物流を統合した合理的な物流体制の構築を目的とする取組み。
参考:早稲田大学椎野潤教授の建設EDI研究HP
 
建設物流EDIを用いた共同配送の建築現場と物流センター
図−5 建設物流EDIを用いた共同配送の建築現場と物流センター
出典:建設副産物リサイクル広報推進会議
大平
 建設副産物対策について、我々建設業界は、建設9団体の副産物対策協議会を母体とし、ここで様々なワーキングを設け、大きくは3つの対策を実施しています。それは、廃棄物の発生抑制、リサイクル、適正処理です。
 まず、1つ目の発生の抑制は、廃棄物を現場に入れない、排出しないことで、具体的には、材料の実寸発注、梱包材の簡易梱包や無梱包、コンクリートガラの場内利用等を行ってきました。また、工法の改善ということで、PC化やユニット化などを実施してきています。この結果、廃棄物量が10年ぐらい前の42kg/uから29kg/uまで減少してきています。
 2つ目は、リサイクルの推進です。発生したものは徹底してリサイクルします。ポイントは現場の分別活動になります。業界共通の分別表示板や分別ポスターの制作をし、PRしてきました。また分別されたものは、産廃業者に出すのではなく直接メーカーに戻そうといった運動を展開してきました。これは旧厚生省の広域個別指定制度を利用したもので、例えば石膏ボードをメーカーに戻すとか、グラスウールを戻す、木くずあるいは紙くず、コンクリートガラも戻すといった運動です。これはかなり徹底してきています。
 次のポイントとして、分別容器があります。今まで建設現場というのは8m3程の大型コンテナをどんと置き、この中に何でもかんでも廃棄物を入れていました。これを止め1m3程の分別容器を使お うと、現在運動しています。
 先ほど藤井さんのお話にもでました巡回回収のシステムについて、例えば、BCSと関東建廃協という処理業団体が合同で小口巡回回収システムを試行しました。これは、昨年1カ月間実施しています。
 また私ども竹中工務店においては、関東甲信越地方すべての現場(約300ヶ所)で巡回回収を実施しています。そういう意味では、先行して巡回回収に力を入れてきました。また、建設汚泥のリサイクルも建設業界として取り組んでまいりましたが、建設汚泥リサイクル指針等を踏まえながら、現場間利用による自己処理、埋め戻し材で利用しています。しかし汚泥か残土かという法律の解釈問題がありますので、汚泥リサイクルについては制度的にもう少し見直すべきところがあるのではないかと感じています。
 3つ目は適正処理です。これは、建設業界としては標準の委託契約書を作りました。また、建設廃棄物用の標準のマニフェスト伝票を作ってきました。それから、マニフェスト伝票購入費の一部を充てて、不法投棄等が起こったときの不法投棄原状回復基金制度を立ち上げてきました。もちろん、建設業界は実際に不法投棄が起こっているところの実態調査等についても積極的に協力してきました。
 このように、発生抑制、リサイクル、適正処理、それぞれに建設業界は取り組み、一方で教育、指導の面においても資料を作成し、講習会等を実施し、意識啓発を図ってきました。さらに、少し別の観点で言えば、環境保全活動の浸透ということで、ISO14001の認証取得についてもかなりの建設会社で増え、やはり環境に優しい企業であることに意義を感じています。

個別指定制度
再生利用者の申請を受け、都道府県知事が指定するもので、廃棄物の種類、発生場所と再生利用の場所及び用途が指定される。この指定を受けた場合は、その申請者は廃棄物処理業の許可を取らなくても、客観的な証明を受けることとなり、その廃棄物を再生利用することができる。

小口巡回回収システム
社団法人建築業協会(BCS)と関東建設廃棄物協同組合が実施している首都圏において十分な分別ヤードが確保できないことや、分別による少量多種の廃棄物の排出となり、収集・運搬が非効率になるなどの様々な非効率な課題を解消するため、都内の小規模作業所を対象に、異なる企業の施行現場を巡回しながら分別された廃棄物を回収するシステム。現在はさらに効率的なシステム構築を目指し試験的実施期間中。

マニフェスト
排出事業者が産業廃棄物の処理を委託する際に、産業廃棄物の種類、数量、形状・荷姿、収集運搬業者名、処理業者名、最終処分の場所、取扱い上の注意事項等を「産業廃棄物管理票(マニフェスト)」に記載し、産業廃棄物の流れを自ら把握するとともに、廃棄物の処理を確認するためのもの。平成9年6月の破棄物処理法改正により、平成10年12月1日から、産業廃棄物の処理を他人(処理業者)に委託するすべての事業者はマニフェストの発行が義務付けられた。

不法投棄原状回復基金
平成9年の廃棄物処理法改正で制度化され、平成10年6月以降に生じた不法投棄に対し、都道府県が原状回復を行う時に、不法投棄者が不明であったり、摘発したとしても資金がない場合に対し、資金援助を行う制度。

ISO14001
1996年発行された環境マネジメントシステムの規格。企業などが環境に与える負荷をできるだけ減らすように配慮することを経営の柱の1つとし、Plan(計画)、Do(実施)、Check(点検)、Action(見直し)のPDCAサイクルを踏まえ、組織の仕事の進め方の仕組みを規定したもの。

柳澤
 杉山さんは、環境コンサルタントとして、特に地方公共団体の環境問題に携わっていることを踏まえ、地方公共団体では循環型社会構築に向けどのような取組みを実施しているか、その概要をご紹介いただけますか。
杉山
 最近でこそ循環型社会という概念が、一般にも随分広がってきたと思いますが、やはりそこに広がるまでに果たしてきた地方公共団体の役割というのは大変大きかったように思います。今でこそ瓶、缶は集めるのが当たり前になっていますが、今から10年前あるいは15年前を考えますと、恐らく15年前に今と同じ瓶、缶を集めていたら、相当先進的な取組みとして、むしろ高い評価を得ていたというようなことを考えますと、やはりずいぶんここ10年で変わってきたなという気がします。
 そういう中で、地方公共団体が果たしてきた役割は大きいと考えています。私、きょうは1つおもしろい調査結果をご紹介したいと思っています。それは平成9年に調査されたのですが、全国の市長の集まりである全国市長会が財団法人日本都市センターに調査を委託し、委員会形式で調査を進めたものです。私も委員として参加したのですが、その中で、全国の市を対象にいろいろアンケート調査をとりまして、循環型社会の担い手は一体 だれだと思いますかということで、地方公共団体の担当者の方に聞いたわけです。
 その結果、驚くべきことに、自ら市町村であるというふうにお答えになった地方公共団体はわずか0.4%でした。生産・製造事業者と答えられたところが57.5%、流通・販売が3.6%、市民が20.9%、国が15.2%でした。地方公共団体の担当者が、自ら自分たちは一番の担い手ではないと評価をされたことに非常に驚きました。
 しかし、それから3年経ちまして、その間、その意識を払拭するように、様々な取組みが各地方公共団体で行われるよ うになりました。例えば、ごみの有料化ですね。小さいことかもしれませんけれども、お買い物に行くときには買い物袋を持って、なるべくスーパーなどのレジ袋をもらわないようにというような活動を市民に働きかけたり、環境教育に力を入れています。また公共工事においては、なるべくグリーン購入をしていく、あるいは最近、色カレットという、処理しにくい色のついたガラス瓶を砕いて、ブロックのようなものをつくり、学校の校庭の通路に敷くなどいろいろな取組みが見受けられます。
 しかしながら総じて申し上げると、何かをやらなければいけないことはわかっているが、地方公共団体としてはなかなか主体的に動きづらい状況があるように、印象として受けています。
 
杉山 涼子氏 杉山 涼子氏
1978年 大阪大学工学部環境工学科卒業。
1981年 米国インディアナ大学大学院修士課程修了(生態学専攻)。
1987年 東京工業大学大学院博士課程修了(社会工学専攻)。
1988年 廃棄物・リサイクルコンサルタント会社入社。
1996年 (株)杉山・栗原環境事務所代表取締役として現在に至る。
<主な委員会等>
建設省等「建設リサイクル推進懇談会」委員、国土交通省「公共工事の環境負荷低減施策推進委員会」委員、環境省・国土交通省「廃棄物の広域処分事業連携方策検討会」委員など
 
建設廃棄物の種類別排出量(平成12年度)
図−6 建設廃棄物の種類別排出量(平成12年度)
出典:国土交通省

建設廃棄物の品目別リサイクル率
図−7 建設廃棄物の品目別リサイクル率
出典:国土交通省
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