小委員会

河川CIM標準化検討小委員会

小委員会 概要(第2019-03号)

小委員長)
小林 一郎 (熊本大学大学院 特任教授)
検討テーマ) 
河川CIMへの活用を視野に入れた3次元による河川設計プロセス検討

検討メンバー

中村 圭吾(国立研究開発法人 土木研究所)
林田 寿文(国立研究開発法人 土木研究所)
大槻 順朗(国立研究開発法人 土木研究所)
大呑 智正(一般財団法人 先端建設技術センター)
嶋田 博文(国土交通省 近畿地方整備局)
鵜木 和博(国土交通省 九州地方整備局)
坂元 浩二(国土交通省 九州地方整備局)
山本 一浩(八千代エンジニアリング株式会社)
佐藤 隆洋(日本工営株式会社)
事務局:中島 幸香(熊本大学)
オブザーバ:尾澤 卓思(一般財団法人 日本建設情報総合センター)
オブザーバ:青野 正志(国土交通省 水管理・国土保全局)
オブザーバ:福島 雅紀(国土交通省 国土技術政策総合研究所)
活動目的)
背景:
CIMガイドラインは主として、構造物のモデル化に力点がおかれている。ただし、建設ライフサイクル(調査・設計・施工・管理:以下、4段階)全体でのCIMデータのシームレスな活用を考えると、各段階でのCIMデータ運用のためのマネジメント・モデルが必要となる。ガイドライン「砂防編」は、唯一マネジメント・ベースのモデルの提案がなされている。「河川編」でも、今後このようなモデル構築が重要である。
なお、本文では、CIMデータをCADデータと点群データに二分する。これは、後述するデータ活用フローにおいて、点群データのみでの4段階の活用フローの実現性が高くなったことによる。現場職員が、CADソフトに依存せず、点群データの処理とビューアーでの地形確認が可能になれば、4段階でのICT活用は飛躍的に拡大すると考えられるからである。
ただし、堤防をはじめとする河川構造物や地形の切り盛りの設計は、3次元化されれば、CADソフトへの依存度は今まで以上に高くなっていく。このため、河川構造物に関するCIMガイドラインの策定を見据えれば、CADデータ活用フローの検討も重要な事柄である。
このような観点に立って、本小委員会の目的に沿った活動をしている3グループを紹介し、その内容を概観する。

C1:福井CIM勉強会
地場の企業(建設会社、コンサルタント、ソフトウエアー会社)のみが参加し、小規模な工事に対し、設計から施工、管理までを一連で実施するための問題点の検討がなされている。また、発注者として参加の国土交通省・近畿地方整備局・福井河川国道事務所では、CAD情報を管理に生かすための、課題抽出が進められている。
今年度は、環境に配慮した河道掘削の3次元設計および、3次元設計で得られた3次元モデルデータによるICT土工の工事を実施する予定である。

C2:3次元川づくり支援ツール検討グループ
国土交通省が進めるi-Construction(アイ・コンストラクション)調査・設計・施工の流れにおいて、3次元川づくりにおいては3次元設計における課題が大きいとの認識のもと、iRICをベースとした3次元設計を支援するツールを土木研究所自然共生研究センターを中心として、国総研・河川研究室、VRについては九州技術事務所などと連携しながら、実務的なツール開発を実施している。合わせてiRICのソルバーとして3次元で河川環境を評価するツールEva-TRiPの活用・改良も実施している。

C3:九州地方整備局・CIM導入検討委員会・河川分科会
九州地方整備局・河川部では、CADを用いた4段階のモデル活用のイメージ(図1-1)が作成され、堤防に関しては、3次元でのモデル構築とこれを用いた景観検討が試みられた(白川激特区間)、また分水路の掘削断面決定において、3次元CADソフトを活用した地形設計が試みられた(川内川曽木分水路)。なお、図中のIW (InfraWorks)、Civil3D、NW (Navisworks) はいずれもAutodesk社、SU (SketchUp) はTrimble社の製品である。これらは、ある現場での使用実績に過ぎない。
なおこの分科会は現在、①基盤となるソフトウエアーの決定、②CIMデータ活用のための人材育成、③管理段階での基本フレームの見直し等が主な課題となり、全体のCIMモデル運用の展望は、道半ばである。


図1-1 CADソフトを活用した4段階の河川CIMのイメージ図


なお、上記3グループと本小委員会のとの関係は図1-2の通りである。
「2-3 活動体制」に後述するとおり、本小委員会と3グループは人的交流があり、互いに補いつつ、活動することとなる。


図1-2 本小委員会と3つのグループの関係


課題:
課題の整理に当たり、次の3項目について用語の説明をおこなう。

1)データ形式
・点群データ:基本的に、CIMガイドラインに準拠。
・CADデータ:形式的には、IFC形式であるが、使用ソフトに依存する。九州地方整備局では、Autodesk社の製品を使用中。

2)設計対象
・骨格設計(主として地形モデルの設計に用いられる)
・細部設計(主として構造物モデルの設計)
・全体設計(ガイドラインの「統合モデル」の設計)

3)検討事項
・制度的検討:4段階でのシームレスなデータ運用の方向性提示で、(A)点群データのみの場合と(B)点群を含んだCADデータの2通りがある。
・技術的検討:ここでの、対象は3次元地形設計に限定するが、構造物設計に関しては、すでに幾つかの提案があり、それは利用可能である。

以上より、本委員会の検討の概念図は、図1-3となる。4段階において内側のフロー(緑線)は、(A)点群データで運用する場合である。図中の各段階をまたぐ①から②のデータフォーマットをどのように設定するかが大きなテーマである。また、内側のフローでは、設計段階では、3次元地形設計(図中の骨格設計)だけを想定している。
一方外側のフロー(赤線)は、CADも含めたものである。この場合は、データ運用というよりも、各段階で使用するCADソフトにより内容が著しく異なる。ただし、実際の設計対象である堤防、樋門等の構造物の3次元設計が始まれば、当然そのような情報を包含した形のマネジメントが必要となる。
図中で管理段階を管理モデルAと管理モデルBに分けている。管理モデルAは、現場で有効に活用可能なモデルのことで、具体的な内容は今後検討すべきものである。一方、管理モデルBは、すでにC3グループによる提案(河川管理の基本フレーム)の例があり、これに点群情報を付加すれば、管理に必要な最低限の情報を得られる。事例として、大野川・大分川(大分川河川国道事務所)でのものが参考になる。
なお設計段階では、全体設計が必要であり、細部設計(構造物やその階段等の周辺の設計)も必要となる。つまり、究極的に、3次元設計を実現するためには、全体設計を行うこととなる。このフローのAからDにおけるCADデータの受け渡しは、IFCの基準に準拠すれば理論的には問題はない。ただし、CADソフトの3次元対応の進捗とIFCデータとの相互互換の現実性は、現時点では明言できない。むしろ実用可能な複数の3次元ソフトを使い分けることで、現時点でも、十分実用に耐える成果が期待できる。


図1-3 本小委員会の検討の概念図


目的:
本小委員会の目的は、直接的には、3次元河川設計のプロセスを検討することである。これは、図1-3における内側のフローに対応している。ただし、CIMガイドラインとの関連があるのは、CADデータの運用を含む外側のフローであり、これについても提言をまとめたい。
活動期間)
2019年8月 ~ 2021年6月
活動成果
活動報告書
(4.2MB)
成果報告書
(18.9MB)