特別委員会の検討成果公開について
令和4年7月4日
社会基盤情報標準化委員会事務局
ICTを活用した画像・映像情報の利活用のあり方に関する提言
令和4年6月30日、社会基盤情報標準化委員会(委員長:柴崎亮介 東京大学大学院教授)が開催され、同委員会の特別委員会(特別委員会委員長:皆川勝 東京都市大学名誉教授)においてとりまとめられた「ICTを活用した画像・映像情報の利活用のあり方に関する提言」が報告、了承されました。
社会基盤情報標準化委員会が設置する特別委員会では、ICTを活用した新たな画像・映像情報の利活用のあり方の検討が行われてきました。
提言では、以下の2つの成果を示しています。
第1段階の成果は、画像・映像情報の基本的な構造の明確化、画像・映像情報の利活用の基本的な構造の体系化です。現在の画像・映像情報の利活用状況や要領・基準等の整備状況を示した上で、画像・映像情報の本質的な性質・特徴、利活用における階層構造を明確化しています。AI、3次元モデル、xRの技術や画像・映像のマネジメントを活用することで、記録や「目視と同等」という活用方法だけでなく、評価・判定まで可能となり、情報の高度利用や早期に優れた意思決定が行えるようになることを示しています。
第2段階の成果は、この体系をもとに、画像・映像情報の利活用技術の傾向を「画像・映像情報の基本的な構造の観点」、「土木分野と建設プロセスの観点」で分析したことです。これにより、利活用の多い技術要素と特徴・傾向、他分野への展開の可能性が期待できる技術があること、事例数の多寡にかかわらず画像・映像情報の利活用技術の幅広い実用化が可能なことを明らかにしています。また、土木分野においては、活用事例が多く早期適用が必要な分野・プロセスを示すとともに、関連する要領・基準等の状況を明らかにし、今後の要領・基準等の整備の重要性を示しています。
ICTを活用した画像・映像情報は、技術の進歩とともに日々進化しながら、土木の幅広い分野でかなり利用されています。これにより仕事の仕方も大きく変革され、高度化されていきます。このため、利活用技術の確立と普及が重要であり、標準化や基準・要領等の整備が必要となります。また、画像・映像情報は土木分野に限らず様々な分野で活用されていることから、他分野での先行事例(自動車分野、鉄道分野、防犯分野)を参考に、建設分野においても同様、あるいは更なる高度利用を図っていくことが有効です。
以上の成果について、建設現場の関係者が明確に意識しつつ、画像・映像情報の利活用技術の開発、利活用の普及に向けた環境整備を進め、より効率的かつ効果的な仕事の仕方へ変革し、建設プロセスの一層の生産性向上に寄与することに期待を寄せています。
提言
画像・映像情報のユースケースについて
画像・映像情報の現場での利活用の推進や今後の標準化の検討の参考となるように、提言の検討の中で分析に使用した事例から有用なものをユースケースとしてまとめました。
ユースケースは、土木分野、建設プロセス、撮影・可視化対象事項、活用目的、技術要素など、様々な観点で検索・参照しやすくするため、それぞれの観点を軸としたマトリックス表及び一覧表の形式のインデックス並びにフリーワード検索できるようにしましたのでご活用ください。
フリーワード検索
一覧表形式
No + 分類 | 技術概要 | 分野 | プロセス | 目的 | 撮影・可視化対象事項 | 活用効果※ | 部材 | |||||||||||||||
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事例数: 多 |
他分野 展開 |
事例数: 多以外 |
位 置 |
形 状 |
文 字 |
明 | 色 | 音 | 温 度 |
速 度 |
濃 度 |
品 質 |
コ ス ト |
工 程 |
安 全 |
教 育 |
環 境 |
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1 | 車両に搭載したレーザと3Dカメラにより走行しながらひび割れやわだち掘れなどの路面の凸凹を計測(No.10に他分野展開の事例あり) | 道路 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリ/アスファルト | |||||||||||
2 | 地物等の三次元点群データをAR表示することで、視界不良時においても地物や地形の位置・形状がわかるようサポート | 道路 | 維持管理 | 事象の認識 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | ||||||||||||||
3 | カメラで撮影した鋼骨組構造物についてAIが部材を特定して自動検出する仕組み | 分野共通 | 施工 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 鋼構造物 | |||||||||||||
4 | 橋梁上の舗装でビデオカメラで捉えた映像を解析してフィニッシャの舗装高さを自動制御 | 橋梁 | 施工 | 事象の認識 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | |||||||||||||
5 | AR 技術を用いてCIM モデルと三次元解析結果をiPadによって現地で表示するアプリケーション | その他 | 設計 | 事象の認識 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 鋼構造物 | |||||||||||||
6 | デジタルカメラで撮影した写真からひび割れ・クラックを自動抽出(No.11に他分野展開の事例あり) | 橋梁 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | |||||||||||||
7 | RC床版の下面の現時点の損傷情報(ひび割れなど)を入力することでAIが余寿命を評価 | 橋梁 | 維持管理 | 事象の認識 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | |||||||||||||||
8 | 切羽写真の画像解析と穿孔データによる前方地質のリアルタイム予測を組み合せて、切羽の崩落危険度を可視化 | トンネル | 施工 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 土構造物・地盤 | ||||||||||||||
9 | CCTVカメラが撮影した河川の画像からAIがリアルタイムで河川の溢水を検知する | 河川 | 災害 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | |||||||||||||
10 | 車両に搭載したレーザと3Dカメラにより走行しながらひび割れやわだち掘れなどの路面の凸凹を計測 | 道路 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリ/アスファルト | |||||||||||
11 | デジタルカメラで撮影した写真からひび割れ・クラックを自動抽出 | 橋梁 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | |||||||||||||
12 | 遠方から撮影した高解像度画像のAI解析により自動ひび割れを検知 | 橋梁 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | ||||||||||||||
13 | 舗装や構造物の3次元点群データから、舗装面のわだち掘れやポットホール、コンクリートの浮き・剥離損傷などを検出 | 道路 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリ/アスファルト | ||||||||||||
14 | 「牽引式電気探査」装置を用いて電位測定により堤防内部の水分量を可視化するシステム | 河川 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 土構造物・地盤 | ||||||||||||
15 | 地中レーダを用いてPC床版内部の損傷を電磁波により検出 | 橋梁 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | |||||||||||||
16 | 設計工程で作成した3DCADと製造後の実物をARで重畳して位置のズレと形状の違いを確認 | 全般 | 施工 | 違いの判別 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | ||||||||||||||
17 | 画像から計測機器の目盛等を把握 | 分野共通 | 維持管理 | 事象の認識 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | ||||||||||||||
18 | 画像・映像を用いた交通量調査において、ナンバープレートを読み、車両を認識し、走行車両数をカウント | 道路 | 調査・測量 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | ||||||||||||
19 | 画像・映像を用いた交通量調査において、車両通過時の輝度値の変化の差分から移動体を認識 | 道路 | 調査・測量 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | ||||||||||||
20 | ロボットが照明設備の照度を自動測定 | 分野共通 | 維持管理 | 事象の認識 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | ||||||||||||||
21 | コンクリート構造物の打継面の評価について、打継面の輝度分布から状態の良否を判定 | 分野共通 | 施工 | 違いの判別 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | ||||||||||||||
22 | データベースから錆や劣化などの変状がよく似た画像を探し出し損傷判定のときの参考として活用 | 橋梁 | 維持管理 | 事象の認識 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 鋼構造物 | |||||||||||||
23 | 道路区画線(白線)の塗装の剥離状況の変化を把握 | 道路 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | |||||||||||
24 | 自動車積載カメラにより信号機を撮影し点灯色を判定して自動運転に活用 | 道路 | 維持管理 | 違いの判別 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | |||||||||||||
25 | 工事の騒音を可視化して騒音の分布を把握 | 分野共通 | 施工 | 事象の認識 | 〇 | 〇 | その他 | |||||||||||||||
26 | 防音設備の設置による音の変化をシミュレーション | 分野共通 | 施工 | 事象の認識 | 〇 | 〇 | その他 | |||||||||||||||
27 | トンネル点検などで打音データを可視化し異常箇所を見える化 | トンネル | 維持管理 | 違いの判別 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | |||||||||||||
28 | 人工衛星の赤外線画像から、ヒートアイランドの状況を把握 | その他 | その他 | 事象の認識 | 〇 | 〇 | その他 | |||||||||||||||
29 | 火山監視カメラの赤外線画像を常時監視し噴火事象を検知 | その他 | 災害 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 土構造物・地盤 | |||||||||||||
30 | 赤外線画像から法面やコンクリート構造物の変化(浮きや剥離)を把握 | 橋梁 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | |||||||||||
31 | CCTV画像を画像解析して河川の流速・流量を把握 | 河川 | 災害 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | |||||||||||||
32 | 画像や振動を解析し、橋梁のたわみを計測し変位量を把握 | 橋梁 | 維持管理 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | ||||||||||||||
33 | 生コンの流下速度を画像解析して基準を超えたスランプ値となっていないか判定 | 分野共通 | 施工 | 違いの判別 | 〇 | 〇 | 〇 | コンクリート構造物 | ||||||||||||||
34 | 沿道の大気汚染濃度を計測し地図上に図化 | その他 | その他 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | ||||||||||||||
35 | トンネル内部の粉じん・メタンガス濃度を図化して経時変化を確認 | トンネル | 施工 | 変化の把握 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 | ||||||||||||||
36 | アオコの発生状況(濃度差)による濃淡・色彩の違いを判別して清掃範囲を明確化 | ダム | 維持管理 | 違いの判別 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | その他 |
※品質(Quality):品質向上・高度化に寄与する技術 コスト(Cost):コスト縮減に役立つ技術(費用や人員最小化)
工程(Time):作業省力化や効率化、工期短縮に資する技術 安全(Safety):安全性向上に寄与する技術
教育(Training):教育・研修に役立つ技術 環境(Environment):環境保全に役立つ技術
撮影・可視化対象事項 × 活用目的
- 事象の認識:事象やモノを認識・把握すること。
- 変化の把握:事象やモノの変化を把握すること。
- 違いの判別:二つ以上の事象やモノを比較して、差異を把握すること。
建設プロセス × 技術要素
- 事象の認識:事象やモノを認識・把握すること。
- 変化の把握:事象やモノの変化を把握すること。
- 違いの判別:二つ以上の事象やモノを比較して、差異を把握すること。
建設プロセス × 土木分野
- 事象の認識:事象やモノを認識・把握すること。
- 変化の把握:事象やモノの変化を把握すること。
- 違いの判別:二つ以上の事象やモノを比較して、差異を把握すること。